ちょっとスタッフの様子がいつもと違います。秋号巻頭新作が決定してから、作品の完成、そしてかたろぐの製作に及ぶまでの間ずっとその雰囲気は続きました。それは撮影現場にも持ち込まれました。
「ほほう…これはこれは」着用するモデルのひと言からスタートした撮影。カメラマンは何の注文も出さずにモデルの表情を待ちます。スタッフも固唾をのんで見守ります。
ふっと表情がゆるみ作務衣に何かを語りかけるような瞬間、シャッター音が響き一発OK!
見守っていたスタッフからはせきを切ったように拍手と歓声ーー「もう、わくわくもんですよ!」若いスタッフの顔はくしゃくしゃです。
秋号巻頭新作に決まった作務衣にみんなわくわくしていました。それを口にすると夢が破れるような気がして心の中に秘めていました。
もう大丈夫。何とか実現したかった“帆布(はんぷ)”の作務衣が、いよいよローテーション商品として世に出るのです。
「ヨットの帆で作務衣を創りたい」、これが出発点。
船での航海は、何だか人生の旅とよく似ています。逆風に耐え、時に順風に笑う。そのすべての風雪を我が身の糧として翔く。そこに、その人にしか生まれない深い人生の年輪が刻まれていきます。
それを船の推進力にしていく船の帆は、その本質に於いて作務衣を彷彿とさせるものがあります。
この帆布で作務衣を創りたいとの想いは、いつの間にか自然とスタッフの意識の中に飢え付けられていきました。
実際、会員の皆様へのアンケートでも、作務衣にしたい素材・織物として、デニムと並び帆布は多くの票を集めました。デニムは大きな障害もなく商品化でき、現在ではカジュアル作務衣の大定番にまで育ちました。しかし、この帆布には思うに任せぬ逆風が立ちはだかっていたのです。
逆風の帆布!衣服の採用は難しい…。
帆布は、英語のCANVAS、性格には一平方メートルあたり8オンス(約227グラム)以上の綿や麻の厚布のことをいいます。
特徴は、丈夫で長持ち、通気性や吸汗性に優れ、丸洗いも可。時が経つほどに馴染んで味わい深い魅力を発揮する…など、天然素材ならではの素朴さと多彩な利点を持ち合わせた魅力的な素材です。
その特性ゆえに、船の帆やテント、カバンなど耐久性を必要とするものに用いられていますが、なぜかこれまで、衣服への採用はありません。
それというのも、厚手の帆布は非常に硬く、折り目ひとつ作るにも、職人が切り株の上で木槌や金槌を使って叩くほど。それを、肌に馴染むほどに柔らかくしようというのですから、確かに立ち往生もやむを得ません。
ちょっと落ち込み気味のスタッフに、当会の代表から珍しく檄が飛びました。
「作務衣に最もふさわしい素材が目の前にある。これを作務衣にして一人でも多くの人に提供する。うちがやらずにいったい誰がやるんだ。みんな帆布が好きだろう?帆布の作務衣を作ってわくわくしようや…」
これ以来、「わくわくしよう」が合言葉。チームは再び走り出しました。ネットワークを駆使してやっとある生地屋さんにたどりつきました。
“繊維を食べる”天然酵素<セルラーズ>!?
具体的には天然繊維のセルロースを溶かす作用のある繊維素酵素<セルラーゼ>の溶液を使って帆布を洗います。
“繊維を食べる”と言われる天然酵素<セルラーズ>の働きで、生地表面の硬いザラザラとした凹凸部分を穏やかに加水分解することにより表面や生地自体が柔らかくなります。
帆布の繊維を減量させソフトに仕上げると同時に、繊維の中古化もすすみ生地に馴染みのある風合いが得られ、均一な色落ち感でより繊細でナチュラルなユーズド感が表現できます。
従来の塩素系薬剤を使った結果に比べ、天然酵素による加工のため、からだに優しい仕上がりになるのも、嬉しい限りです。
さすがにモチはモチ屋。涼しい顔で説明を続ける生地屋さんにプロフェッショナルの凄さを見ました。
こうして誕生したのが今回秋号の超目玉「バイオウォッシュ作務衣」です。
適度な厚みと硬さを持った9号の帆布生地が、バイオウォッシャーという新技術を得て大変身。帆布ならではの風合いを残しながら、全体にソフトな仕上がり。さらに、使い込んだユーズド感も絶妙。野趣に富んでいながら、アーティスティック。
実にインパクトの強い作務衣が歓声しました。
使い込む内に生じるマイ・サムエと言うべき愛着。
「バイオウォッシュ作務衣」。見事なまでに帆布の素材特性が生かされています。
まず第一に丈夫。しかも通気性と吸汗性に優れ静電気も起こりづらい。少々乱暴に扱っても、タワシでごしごし洗ってもびくともしないタフさは頼もしい限り。
何より嬉しいのは、使い込む内にさらに柔らかくなり身体に馴染んできて深い味わいと、マイ・サムエとも言うべき愛着が出てくることです。
彩りは、帆布にふさわしいエコカラー。天然素材に天然酵素による加工、当会では“地球色”と呼ばせてもらいます。
部屋着や仕事着としての着用はもちろんですが、できればアウトドアでの着用をおすすめします。秋の自然の中でこの作務衣が生き生きと舞い、跳ねる…そんなシーンを想像するだけで、またわくわくしてしまいます。
一番厳しかったのは価格の設定。そして一番嬉しいのはこの価格の実現。一人でも多くの方に、帆布ならではの愉しみを。
前出の当会代表は言います。
「一番厳しかったのが価格設定でした。そして一番嬉しいのが二万円以内の価格が実現したことです。バイオウォッシャーを施してのこの価格は関係各位のご好意なしではでき得ないことです。ありがとうございました」
一人でも多くの方に、帆布ならではの愉しみを味わっていただきたいと思います。
私どものわくわく感が皆様に伝われば何よりです。ぜひお試しを。