日本の和服・作務衣を専門に追求した「作務衣博物館」

日本の和服・作務衣を専門に追求した「作務衣博物館」は「作務衣の専門館『伝統芸術を着る会』」によって運営されているウェブサイトです。
カタログ和服こぼれ話 , 95~96年の作務衣

正絹刺子織作務衣 黒刺子開発話


もうすぐ100にも及ぼうかという作務衣を開発し、会員の皆様にご提供している当会のスタッフも、仕事を離れれば作務衣の好きな一人の人間。ですから好みもさまざま、作品の好き嫌いだってあるのです。



そんなスタッフが、こと「人に見せたい一着」という点に限れば、ほとんど意見を一致させる作務衣があります。



その一着というのが、一昨日の秋に開発した「絹刺子作務衣」です。華麗な絹の輝きに、刺子の存在感のある質感が交わったこの作務衣の風合いと表現力は圧倒的。スタッフはおろか、会員の皆様をも一様に唸らせたものでした。



絹と刺子がおたがいの良さを引き出しあう…



着て誇らしく、人に見せたくなる作務衣――これは「人と作務衣の関わり合いを考える」という照合のコンセプトを受けるに最もふさわしい一着ではないでしょうか。



というわけで、今回の巻頭を飾る新作は、絹と刺子の組み合わせ、これ以外にはない!と衆議一致を見ました。



色は、黒。といっても真っ黒ではありません。刺し模様の質感が微細な白と黒の世界を展望し、全体の色彩感としては、濃い鼠色を思わせます。まさに「黒刺子(くろざしこ)」。素直にこれを作品名として頂きました。



この彩りと質感を流麗に気高く包み込んでいるのが、絹ならではの輝き。なにしろ、刺子に織るため、通常の3割近くも多く使われている絹の光沢が刺子独特の凹凸を鮮やかに際立たせています。思わず触ってみたくなるこの質感――。



織りはもちろん刺し子織。通常の刺し子織は地布になる糸より刺子部分の糸の方が太くなりますが、この絹刺し子織は、同じ太さの糸で浮き織りにして凹凸をつけています。



これは「崩し織刺子」という伝統の技法。この刺し子織による質感が、逆に絹の輝き過ぎを抑え、総じて格調高さを生み出しています。絹と刺子がお互いにその良さを引き出し合っているということです。



本来的な意味からすれば、水と油に近い「絹」と「刺子」の組み合わせが、ここまで高い品質レベルで完成。まさに、人に見せたい一着です。

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