日本の和服・作務衣を専門に追求した「作務衣博物館」

日本の和服・作務衣を専門に追求した「作務衣博物館」は「作務衣の専門館『伝統芸術を着る会』」によって運営されているウェブサイトです。
91~92年の作務衣 , 絹作務衣

絹唐桟作務衣・羽織 音羽、花川戸(きぬとうざんさむえ・はおり おとわ、はなかわど)


インドより渡来、江戸の中期に大流行した唐桟縞で仕立てた作務衣を二点、新作としてご紹介します。



素材はいずれも絹100%。直線的に流れる縞の美しさが、絹ならではの光沢に溶け込み、優美さと粋をいやが上にも引き立てます。



細い縞の「音羽」は、濃紺と茶に淡い藍を一組にしたタテ糸と、濃紺のヨコ糸を交わらせた微妙な色合い。紺を主にしていながら、鼠色に見せる奥深さが特徴です。落ち着きと品格の粋をイメージしています。



少し大柄に見える縞の方は「花川戸」。茶と生成の白をタテ糸に、金茶のヨコ糸を交わらせた明るい色合い。ちょっといなせに、遊びごころの粋を表現しています。



まさに、静と動。江戸っ子の粋を対称的にとらえてみました。

サラリとした肌触り、着用感も抜群です。お好みに合わせてお選び下さい。



絹に唐桟とくれば、やはり羽織を合わせたい。



さり気なく作務衣の上にはおるだけで、“音羽”なら、さらに格調が増すというもの。

“花川戸”だって渋さが加わり粋を高める。布、色、織りはすべて作務衣と共揃い。



羽織を着ると、なぜか口調まで変わるから不思議。

- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

唐桟縞(とうざんじま)について(3)


この唐桟縞で作務衣を仕立てる――



唐桟縞に関するおおよそのことはお分かり頂けたかと思います。そこで本題に入らせていただきます。



私ども「伝統芸術を着る会」では常に“古き佳きもの”を掘りおこし、現代に新しい生命を灯す――というテーマを持って活動を展げています。そのアンテナが、この唐桟縞を確実にキャッチしたのです。



なにしろ、インドからやってきてその粋さと色感覚のモダンさで時の江戸っ子たちを陶酔させてしまい、一時代を築いた織物なのですから、これは見逃すわけにはいきません。



早速、唐桟作務衣の開発に着手したのですが、これが以外に大変なこと。

それは織りであると同時に縞模様でもある上に、後に国産品も多く登場したため実に縞や色の組み合わせの種類が多いのです。ですから、これが唐桟!と断じ切れない部分も生じてくるのです。



そこで、唐桟縞の中から典型的な二種類を対称的に選び出し、多少のオリジナリティを加えることにしました。



色も同様。藍と白のたて縞を青手と呼び、赤い縞を赤手と呼んだ唐桟縞の初期の大別に合わせて独自の色合いを組んでみることにしたのです。



テーマは「江戸の粋」。素材は光沢の似た絹を使うことに決定。



テーマは「江戸の粋」という点に置き、名称も青手系を「音羽」、赤手系を「花川戸」と決め、そのイメージに即した縞柄を求め試作を繰り返しました。



さらにもうひとつ、大きな決断が必要でした。それは素材です。

元々、唐桟縞は木綿が素材であったために江戸の庶民の間で流行したといういきさつがあります。しかし、それは当時、町人が自由に絹を着ることができなかったという事情があります。そして、この海を渡ってきた縞木綿が、まるで絹のような光沢を放っていたことが人気の秘密でもあったのです。



これらの点を考え、さらに江戸の粋を求めるなら…と、素材は絹を使うことに決定いたしました。



静と動で“粋”を表現、コントラストの強い二作品が完成しました。



このような過程を経て、「絹唐桟作務衣」を二点、今回の発表に間に合わせることができました。



前述のように、この二作品は敢えて中道を行かず、コントラストの強いものに仕上げています。江戸の粋を、静と動という形で表現してみたという次第。皆様のお好みはどちらか?正直にいって私どもにも想像がつきません。



いずれにしても、この「絹唐桟作務衣」は私どもの作務衣開発のプロセスで記念すべきものになることでしょう。



全体を縞模様で作務衣を仕立てたこと、それもインド生まれの唐桟なのですから画期的。

これは、私どもの作務衣づくりの過程が、様式や形式を守り復活するという段階から、新しくファッション感覚を表現していく段階へと歩を進めた第一歩といえましょう。
- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

唐桟縞(とうざんじま)について(2)

粋な舶来品の上陸に、新しもの好きの江戸っ子が飛びついた。



この唐桟縞が初めて日本に渡ってきたのは、桃山時代と言われています。ですが、一般的には徳川家康の貿易奨励政策がすすめられて以降と考えてよいでしょう。



唐桟は冬の着物として職人、芸人、商人などの間で大変もてはやされていたようです。まず、木綿ですから町人が自由に着れること。さらに、細い糸で打ち込みが固く織られているため、麻状の外観と絹に似たつやと風合いを持っていたこと。しかも、舶来品とあって自慢できた――などの理由で大人気。

特に、気っぷのよい職人たちはすっかりこの唐桟のとりことなっていました。



粋な縞模様と、日本人にはない色感のモダンさは、まさに江戸好み。江戸時代半ば頃から末期にかけて大流行しました。



中でも、インドのベンガル地方から“紅唐桟”がもたらされた文化、文政、天保の頃は全盛時代。江戸の庶民は、男女を問わずこの唐桟の着物で“粋”を競い合っていたようです。



粋と気っぷで、唐桟縞の技術は今も生き続けている――。



つまり、江戸時代に今で言うファッションの大ブームを巻き起こしたというわけです。考えてみれば、今も昔も人の心はそう変わっていないようですね。新しもの好きで、舶来品に飛びついて…われわれもと“粋”や“艶”を競い合うのですから。



しかし、そんな江戸っ子たちの心をがっちりとつかみ、大流行を生み出したのですから、この唐桟縞も大したもの。その独特の光沢や風合い、粋さは当時の人にとって格別のインパクトがあったのでしょう。



もちろんこの頃になると国産品の唐桟(?)も続々と織られるようになりました。川越、青梅、あるいは博多、西陣など織物の産地がこぞってこの縞木綿を手がけるようになります。



こうなると品質の勝負。江戸の末期にはアメリカからの輸入物も入ってきましたが、品質の点で、“アメ唐”などと呼ばれ本格物と区別するほどになりました。輸入物の質をすぐに追い抜く日本人の技術――これも現代に通じる話です。



その後も、近世から今日まで、唐桟縞は脈々と生き続け織られており、特に趣味的な装いに珍重されています。
- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

唐桟縞(とうざんじま)について(1)


オランダ船で長崎へ――粋でいなせな江戸っ子を陶酔させた



インド半島の西海岸、マルバラ地方にサントメ(英語名セントトーマス)という港町があります。江戸時代、このサントメで織られた織物がオランダ船にゆられ、マカオを経て長崎の港へやってきました。時代を考えればこれは大航海。

今回のお話は、はるばる海を越えてきたこの織物についてです。



まさに織物の黒船――インドから華麗なる縞模様がやってきた。



この織物のことを唐桟(とうざん)といいます。細番手の木綿地に細かい縞を織り出した布地のことで、その名の由来は生産地サントメ(ポルトガル語)から来ているようです。



最初は、そのまま漢字を当て“桟留”と呼んでいたようですが、その後に国内での生産が始まると、輸入品の区別をするため“唐桟”と呼ばれるようになったと言われています。



唐桟の唐は、その昔はるかに遠い外国を意味したものでしょうか。

唐人(外国人)が運んできたからとか、唐物屋(舶来品を売る店)で売られていたからとかさまざま。また、一部では、長崎のオランダ人居留地の名称からとって“奥島”などとも呼ばれていたようです。

つまり、外国からやってきた縞織物というわけです。

- トラックバック (0) -
87~90年の作務衣 , 絹作務衣

正絹作務衣 鉄紺(しょうけんさむえ てっこん)


絹の光沢がかもし出す気品に溢れた奥深い色合いは、まさに古彩。



正絹作務衣“絹古彩”シリーズの新作は、写真のように藍の色です。先に“茶”と“鼠”の彩りを開発しましたが、作務衣の基本色である“藍”系の彩りの人気は根強く、要望も殺到したために、今回の新作として開発いたしました。



ご覧のように、少し緑がかり、見る角度や光線の具合で微妙な変化を見せる色。その気品と奥深い色合いから「鉄紺」と名付けました。



絹の光沢と溶け合い、まさに古彩と呼ぶにふさわしい色合いで正絹作務衣の醍醐味が楽しめます。
- トラックバック (0) -
87~90年の作務衣 , 絹作務衣

正絹作務衣 鳩羽鼠(しょうけんさむえ はとばねずみ)

鳩の羽根を偲ばせる渋さと若さを備えた彩り







やっぱり渋さはすてがたい。それでいてこの“つや”は何だろう。



両手を広げて鳩の真似――この彩りは心を豊かにする。







わずかに紫がかった灰色。文字通り“鳩”の羽を偲ばせる色です。鼠色の中でも渋さと艶が微妙に交錯する実に感覚的な彩りと言えましょう。







抑えた感じの着こなしから、見る人をハッとさせる鮮やかさ――まさに正絹作務衣ならではの歓びです。



- トラックバック (0) -
87~90年の作務衣 , 絹作務衣

正絹作務衣 媚茶(しょうけんさむえ こびちゃ)


江戸時代後期に流行した優美で粋な彩り



ちょっと遊び心が欲しい。品を崩すことなく粋な感覚。

絹の輝きがちょっかいを出してきてこの彩りの変化はたまらない。



少し黄色味を帯びた暗い灰黄赤色。この色は、粋な色として江戸後期に大流行した彩りです。



正絹の優美さが、粋な彩りをさらに増してくれるこの「媚茶」は、品を崩すことなく遊び心感覚で作務衣を着こなしたい、という方にぴったりです。
- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

絹古彩(2)

正絹作務衣にふさわしい二つの色



さて次に色です。

この絹素材にふさわしく、さらに作務衣の風情を損なわない色が問題でした。単に色を付ければいいというものではありません。文献を紐解き、古い色彩帖(色見本)まで引っ張り出しての色探しでした。



基本は、昔から藍と並び格の高い色とされてきた<茶>と<鼠>です。この二色をそれぞれに何色も試し染めした結果、二つの色の採用を決定しました。



ひとつは<媚茶(こびちゃ)>。

少し黄色味を帯びた暗い灰黄赤色。この色は粋な色として江戸後期に大変流行しいた彩りです。正絹の優美さが、粋な彩りをさらに増してくれるとの判断です。



もうひとつは<鳩羽鼠(はとばねずみ)>。

この色は、わずかに紫がかった灰色。分かりやすく言えば文字通り“鳩”の羽を偲ばせる色で、鼠色の中でも渋さと若さが微妙に交錯した感覚的ま彩りです。



いずれも絹古彩と名乗るにふさわしい色が決定したのです。



光の違いで生じる彩りの変化も魅力!



出来栄えには自信があります。次で完成した商品写真をご紹介していますが、困った事が一つありました。



それは、本誌に掲載するための写真撮影でした。戸外とスタジオ内では微妙に色が変化するのです。



これは、正絹という素材の持つプリズム効果、つまり光沢の変化のせいなのです。しかし、これは絹の魅力でもあるわけですから、逆にこの絹古彩の特色として敢えて提示しています。



どちらの彩りがお気に召すか。それはあなたの感性にお任せします。どうぞ、じっくりご覧下さい。

- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

絹古彩(1)


絹の光沢に溶け込んだ彩り――見る角度や光によって、渋さと粋さが交錯します。



私ども『伝統芸術を着る会』には毎日のように、作務衣をご愛用の皆様からお便りが届きます。



あたたかい励ましの言葉からお叱りの言葉までさまざまです。また、とても参考になるご提案やご要望もかなりの数にのぼります。



これまでも、キルト作務衣や利休茶作務衣などの開発は、皆様の声が大きなヒントとなり完成いたしました。



そして今回、やはり皆様の強いご要望に応えるべく開発したのが、ここにご紹介する<絹古彩>シリーズなのです。



どんな色にも容易に染まる絹素材!



高級素材の作務衣に彩りを――このご要望は以前よりかなりの数にのぼっていました。当会としても、英断した正絹作務衣の開発と利休茶作務衣の復元の成功により、次に成すべきは何かを探っていましたので、タイミングはピッタリ。早速、開発の緒につきました。



素材は最高級の正絹。これはすぐに決まりました。

その理由は、絹という素材は、どんな染料にも容易に染まり、内部からの反射光が表面に透過して鮮明度の高い発色が得られるという性質を持っているからです。

つまり、微妙な色合いが出せるということです。

- トラックバック (0) -
97~98年の作務衣 , 絹作務衣

謹製 正絹作務衣(きんせい しょうけんさむえ)


優雅な光沢、しなやかな風合い。くつろぎ着として絹を着る。この快感がたまらない!



えっ、絹の作務衣?と、多少とも作務衣をご存知の方から驚きの声があがるかもしれません。確かに、作務衣の本来の姿から考えれば、おや?という感があるのも当然でしょう。

しかし、これもまた現代に新しい生命を灯した作務衣の姿でもあるのです。



作務衣の本物志向がたどり着いた究極の作務衣



古き良きものの心を残しながら、その質的向上を図ろうとする本物志向がたどりついた究極の作務衣――それが、この「謹製 正絹作務衣」です。



これまでも絹を使った作務衣は無かったわけではありません。しかし、それはごくひと握りの貴人や粋人、または富裕家の特別注文によって存在したに過ぎません。つまり、一種の道楽に近いものだったのです。



それだけに、このように絹の作務衣が一般向けに販売されるという例は、作務衣の長い歴史の中でも画期的なことなのです。しかも、それが大変な評判となっているというのですから、これも作務衣愛好者の本物志向をよく現しているといえましょう。



正絹100パーセント。機能や形は昔ながら…



この話題の「謹製 正絹作務衣」、文字通り絹100%の高級品。専門家の間では「正絹紬着尺」と呼ばれているもので、結城紬風に織り上げられています。染色は、非常に堅牢度の高い化学染料でしっかり染め上げられていて、いつまでも新鮮な風合いが損なわれません。



いまさら言うまでもないことですが、絹は布地の王者。それだけに、この作務衣の優雅な肌ざわり、光沢は格別。正絹でなくては味わえない醍醐味です。



社会的地位や年齢にふさわしい小さな贅沢!



この絹の作務衣の評判がすこぶる良いのです。

社会的地位や年齢があるレベルに達すると、家庭でくつろぐ時に、何を着ればよいのか?と迷うもの。まさかパジャマでもあるまい…ということなのです。



その点、作務衣ならその品格と機能性から文句なし。ましてや絹なら…というわけなのでしょう。さり気なく、まさにくつろぎ着として“絹”を着る――この歓びがわかる余裕(ゆとり)派におすすめの一着です。



独特の風格が…



絹の作務衣には、ぜひ羽織をご用意いただきたいと思います。羽織一枚で、くつろぎ着としての機能性に独特の風格がプラスされます。総裏付きで素材はすべて絹100%。

正絹作務衣にこの羽織の組み合わせ、もうこれはフォーマルフェア。お正月は、これで決めてみませんか。

- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

絹三昧(きぬざんまい)(2)


意外な事実――絹は非常に健康的な繊維!



桑畑に降りそそぐ太陽エネルギーを一杯に吸収した桑の葉を、蚕はすさまじい食欲で食べ尽くします。そして、食べた桑の葉を次々と絹物質に変えていくのです。



普通、綿や羊毛などの繊維は細胞により構成されているのですが、繭糸は細胞の分泌物である絹が、糸として吐き出されることにより繊維化されます。



このように液状のものから糸となる現象は大変に不思議なことで他に類を見ません。この絹の持つワクワクするような“神秘性”もまた、絹の人気の秘密かもしれません。



ところで、繭糸の組成は、その90%以上が人体の皮膚に近いタンパク質で出来ているということをご存知でしたか。

このため、人体にとっては非常に健康的な繊維なのです。化学繊維などで見られる肌のトラブルなどが、絹ではまず起こらないのもこのためなのです。



絹の肌ざわり、着心地の良さが言われる裏には、こんな秘密があったということ。自然の神秘的な営みから生まれた絹が、自然主義の復活と共に見直されてきたのもうなずける話です。



光沢や風合いも、やはり布地の王者!



絹の魅力について少しお話いたしましょう。

まず、何と言っても光沢ですね。絹は、真珠や象牙と並んで優雅な光沢の代表といわれています。実に複雑な微細構造がその理由。さらに、大小さまざまな三角断面のプリズム効果が、その光沢をさらに美しいものとしています。

科学繊維の中には、一見、絹の光沢に似たものがありますが、違いは歴然。似て非なるものです。



次に風合い。風合いとは、光沢や触感を総合した感覚的な性質のこと。つまり、目や手触りを通した官能的な品質評価ということです。



絹のぬめり(弾力のある柔らかさ)や、こし(弾性のある充実感)は抜群。また、しなやかさから生まれるドレープ性の美しさも筆舌に尽くしがたいものがあります。その他の要素も含めて、やはり絹は繊維の王者――これに優るものはまず考えられません。



お金に換えられない“絹を着る”という価値観!



絹が見直されている――と申しましたが、衣料用繊維の中に占める絹の消費量は、わが国ではまだ1%にしか過ぎません。供給の問題もあって、まだまだ希少性の高い素材なのです。

それだけに“絹を着る”という感覚は、それ自体がくすぐったいような誇りであり、感性の歓び。お金に換えられない価値観だと言えましょう。

- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

絹三昧(きぬざんまい)(1)

このところ天然繊維が見直されてきています。中でも、“絹”への注目がとても高いようです。長い歴史を持ち、いつの時代においても別格の扱いを受けてきたこの繊維は、また自然の神秘的とさえ言える営みから生まれるもの。それだけに、合理主義の象徴とも言える化学繊維からは得られぬ精神的な何かに多くの人が気づいた結果といえましょう。そんな“絹”の話を少しの間お聞き下さい。



自然と歴史が創り上げた絹の世界



はるかに遠く、今から五千年もの昔。

人類最古の文明が生まれた頃、中国に伝説的な名君と崇められた黄帝という王がいました。ある日、この黄帝の妃が繭を手にし、誤ってこれを茶湯の中に落としてしまいます。慌てて箸でこれを拾い上げようとしますが、手繰っても手繰っても純白の糸が際限なく箸に巻きついてくるだけでした。



もうお分かりでしょう。これが繭から生まれたいわゆる“絹”の始まりなのです。

なんでも事の始まりはこんなもの。実際にこの妃にしても、その後、この絹が世界中に行き渡り最高級布地として高い評価を受けるなどとは想像もしなかったことでしょう。

しかし、あの絹の発見が壮大な浪漫話などではなく、人間のちょっとしたドジから生じたとは、実に人間的で愉快な話です。



憧れに近い感情も受け継がれてきた。



こうやって発見された絹は、その後、世界中へ急速に広まってゆきます。そしてどの国でもいつの時代でも、大変に貴重なものとして扱われてきました。絹がお金の換わりに使われたほどです。それだけに、時の権力者たちがほとんど独占してしまい、後世まで絹は高嶺の花というイメージが定着してしまいます。



日本への養蚕が伝わったのは西方諸国よりも早く、弥生前期(紀元前二世紀)といわれます。養蚕の黄金時代は大化の改新の頃から十世紀にかけてでした。しかし、ここでも、桑を植え、蚕を育てたのは庶民でしたが、一片の私有も許されず上納を強いられてきたようです。



その後も営々と絹は歴史と共に歩み続けてきました。織り技法の発達により、絹の特性はさらに磨きがかけられ、そのイメージは輪をかけて絢爛たるものとなっていったのです。

私たちが、今でも“絹”に対して憧れに近い感情を持つのも、こんな歴史的な背景があるからではないでしょうか。

- トラックバック (0) -
97~98年の作務衣 , 染&織作務衣

スエード作務衣(すえーどさむえ)


スマートな作務衣の誕生です。



スエードとは、羊皮などの柔らかい感触を持つ裏皮(バックスキン)のこと。靴やバッグ、ジャケット、ベストなどに使用される素材ですから、お聞きおよびの方も多いことと思われます。



ただし、実際に動物の裏皮を使うと、とても手が出ないような価格になるため、現在では素材を起毛して裏皮のような感触や風合いを出す「スエード仕上げ」によるものが主流となっています。年頭に発表して話題を集めたご紹介の「スエード作務衣」も同様の仕上げ加工によるもの。



通常ですと綿素材を使用しますが、絹に似た光沢を出すためにポリエステル素材を使用。さらに特殊な剪毛法により、独特の風合いをもたせています。



また、スエードならではの柔らかい感触を強調するためニット織り――と、当会ならではのオリジナリティにあふれたスエード仕上げの作務衣が完成しました。


- トラックバック (0) -
99~00年の作務衣 , 染&織作務衣

オリエント作務衣(おりえんとさむえ)


仏教ゆかりの地ですべてが創られた、オリエンタルな一着。



古き佳き装いを現代に蘇らせる――という当会では、温故知新、装いの進化をも追及し、作務衣のある暮らしの中に新しい意義を打ち立てるというテーマも同時に掲げてきました。



その追求の視点は和の世界はもちろん、良いものは和洋を問わずどんどん採り入れるという柔軟かつ進歩的な志向のもと、数々のユニークな作務衣を世に送り出してまいりました。



そしてこのたび、当会が着目したのは聖なる地、インドが生んだ染と生地…。

自然の恵み豊かな草木染めと科学染料を巧みに交ぜ合わせた独特の染と、素朴な風合いで人気の高いインド綿の融合は、これまでにも数多く外国の生地を見開きした目利きを自負する当会のスタッフも一目惚れの状態…。



しかも、インドといえば、仏教の故郷としても名高い地。作務衣の普及の原点である僧侶たちのことを考え合わせると、当会が偶然にも新作の開発にインドの染と生地に注目したのは、何か大きな輪廻を感じるというもの。



生地は、手織に近いざくっとした味のある厚手。これは、半自動織り機で織り上げたゆえん。しかも厚手でありながら、透かしが入っているところが憎いこだわり。さらに肌に馴染む風合いを重ねるために、一度ウォッシュアウトするという手の込みよう。染も織も縫製も、すべてインドで行った、まさにオリエンタルな作務衣の誕生です。



実はこの新作、モニター調査でも大変な人気を集めた品。眼の肥えた作務衣愛用家の方々をうならせるに十分な作務衣だと改めて自負するに至ったのですが、インドの職人の手によるため如何せん数が創れず、100着限りの限定販売と相成りました。

- トラックバック (0) -
95~96年の作務衣 , 染&織作務衣

コチニール染作務衣 ボヘミアン<自由人>(2)


100%手織の綿絹布地がインドから…



タイミングというものはあるのですね。コチニールへの挑戦が決まった同じ頃、今度はインド経由で魅惑的な布地が届けられたのです。



これがインドの「綿絹(めんきぬ)」。文字通り、綿と絹とが交織されていて何ともいえぬ風合い。しかも、それが100%の手織なのです。インドの機織職人がコツコツと手織した布地の表情は、機械織りでは決して得られぬもの。綿と絹との素材の違いも手伝って、糸の不揃いが嬉しい素敵な布地です。



こんな素晴らしいキャンバスに、コチニールと藍で彩りをつける――職人にとって、それはまさに至福の時であったに違いありません。赤が鮮やかすぎるため、藍との比率が微妙。試し染めを重ねた結果、1対9で染め上げました。



毎日、会員の皆様にお届けする作務衣づくりでは、精緻なまでのいわゆる職人芸を発揮する職人たちが、その仕事を心から楽しんで成した一着。この作務衣からは、新しい翼を持った「心の書斎」の香りがただよいます。

- トラックバック (0) -
95~96年の作務衣 , 染&織作務衣

コチニール染作務衣 ボヘミアン<自由人>(1)


作り手の嬉しさやときめきが、着る人の心をさらに自由にする――



「コチニールがまとめて手に入ったよ、どうする?」メキシコから一本の電話が当会の空気を一変させました。電話を受けたスタッフは、目をキラキラさせて「赤染めが出来るそうです!」と叫び出す始末です。



確かに、藍染にはじまり、草木染、茶葉染、樹木染…とステップを踏んできた当会にとって「赤染め」とも「虫染め」とも言われるこのコチニール染めは、挑まねばならぬものに違いありません。



まとまった入手が難しい動物染料



コチニールとは、ペルー、メキシコ原産のウチワサボテンに付く介殻虫から採った動物染料のひとつ。色素の主成分はカーミン酸という赤色素で、古くから緋(赤)染に用いられていました。ただいかんせん、動物染料ですから、大量の供給は難しく、科学染料が発達した現在では、特に日本ではほとんど見かけることがなくなっています。



しかし、そのコチニールがまとまって入手できる…と言われたら、逃げるわけにもいきません。急遽、ゴー指令。コチニール染へのチャレンジが始まりました。
- トラックバック (0) -
97~98年の作務衣 , 染&織作務衣

ニットコール天作務衣 秋鼠(にっとこーるてんさむえ あきねず)


軽くて暖か、ソフトな肌触りがたまらない。当会初、ニットを採用。



秋とくればコール天。発表と同時に絶賛集中のシリーズですが、今年の秋はこれまでにまだ手をつけていない素材に挑もうではないか――。



そんなスタッフが注目したのが、洋装における秋冬の暖かな素材として馴染み深いニット。作務衣にニットとはこれまたユニーク、作務衣の専門館としてはやりがいがあると、意気揚々と開発を進めてまいりました。



そのテーマは「より軽やかに、さらに着心地よく」



重ね着太りが増える季節の中にあって、もっと気軽に颯爽と、しかもソフトに作務衣を着こなしていただきたい。そんな思いの中から元気な産声を上げたのが、新作「ニットコール天作務衣」です。



着心地も機能性も兼備、装いの季節にもってこい。



当会初のニット素材を、お洒落なコール天仕立てにした意匠は、装いの季節に相応しく、彩りもなかなかのもの。



特筆したいのは、身体にしっくりと馴染むその軽さと、ソフトな感触。肩が凝らず、思わず着ていることを忘れそうなほど。また、適度な伸縮性もありますから、長時間の読書や趣味に勤しむのにはもってこいです。



「だが、ニットというからには、毛玉ができやすいのではないか…」そんなご心配をお持ちになるのは当然のことですが、何卒ご安心を。それは開発段階でスタッフからも出た疑問。



そこで今回、ニット素材を用いるにあたり、捻じれを防ぐピリング性に富んだ大手メーカーの糸を採用することによって、毛玉の心配を解消しました。その上、ご家庭で丸洗いもできるという利便・機能性も、しっかりと重視しています。



部屋着として趣味にいそしむもよし、戸外で季節の趣を楽しむも、またよしです。

- トラックバック (0) -
97~98年の作務衣 , 染&織作務衣

コール天作務衣 生成(こーるてんさむえ きなり)


雑念のない無垢な白。これを着こなせばお洒落の達人。



畝の変化が醸し出す色合いの微妙な彩りと、お洒落心をくすぐる意匠で大人気のコール天作務衣。新作は、何とも潔く清々しい白です。



実はこれ、作務衣をユニフォームにしてみたいという外食店主の声をヒントに作った一着。とはいえ白といえば簡単そうでなかなか着こなせない、いわばお洒落の上級者好みの色。しかもセンス豊かなコール天とくれば、着こなしがいこの上なし。



この作務衣を着て闊歩する方は、中々のつわものと羨望を集めるに違いありません。

- トラックバック (0) -
97~98年の作務衣 , 染&織作務衣

コール天作務衣 緑粋と羽織(こーるてんさむえ りょくすいとはおり)


さらに、素材と色にこだわって…



大変なご好評を頂いた「コール天作務衣・群青」。次はぜひ綿素材でそれ以上のコール天作務衣を作りたいと、コール天好きのスタッフから声が上がりました。



作務衣にコール天素材は大変合う、だからこそ作務衣の基本である綿素材のコール天で作りたい、と言うのです。こだわり屋の彼のこと、ただ綿素材というだけでは納得するはずはありませんでした。



シルクのような艶と深みのある色



綿ならではの特性、丈夫で扱いやすく、身体に馴染み、また乾燥した季節の厄介者・静電気が起こりにくいことはもちろん、その上シルクを思わせるような艶と深みのある色が欲しい…というのです。



素材探しに駆け回り、やっと巡り合ったのが、ご覧の作務衣です。苦労の甲斐あって、その艶はまさにシルク。色も何ともいえぬ深みのあるグリーンを出すことができました。
- トラックバック (0) -
95~96年の作務衣 , 染&織作務衣

コールテン作務衣 群青と羽織(こーるてんさむえ ぐんじょうとはおり)


昔懐かしき響きを重ねて、「コール天作務衣」と名乗ります。



まず畝を目立たせない渋いコーデュロイ作務衣、次いで畝の太いタイプ(太コール)のコート、そしてついに、中コールにて毛羽立ちをはっきり見せた本格コーデュロイの登場。



これだけ新しく、鮮やかな作品が誕生しますと、何故か「古き佳き…」という言葉を記したくなるもの。前作「コーデュロイ作務衣」との識別を図る意味からも、昔懐かしい響きを持つ呼び名「コール天」を復活させたくなりました。

ひとつ、当会の趣味・道楽の成せるわざ…とお許し下さい。


- トラックバック (0) -
97~98年の作務衣 , 染&織作務衣

ベネシャンウール作務衣 至高(べねしゃんうーるさむえ しこう)


大切な人に逢う時こそ一期一会と心を戒め、装いもしかり。礼を失わぬ究極をまとうべし。



人と逢う、一期一会の場…。

特に社会において、それなりの地位を築いた方々ならば、なおさらのこと。やはりここは一番、装いも、相手からに礼を失わぬこともさりなん、自らを凛々しく戒め、これまで歩んだ経験と自負を密やかに込めた、究極の訪問着にて挑みたいもの。



ならばと送り出しましたのが、当会における究極の作務衣、その名も「至高」と名乗ります。



素材は、ウールの中でも最高級と言われる梳毛(そもう)を100%採用し、素材・仕立て・意匠ともに、これ以上は思いつかないと職人を唸らせた和装の本格仕立て。当会の至宝とも言うべき作務衣となりました。



だからこそ、羽織も特別仕立て。着物同様、折り返し付きの洒落た意匠が、風格に一段と深みを与えます。



ここ一番の場に、大切な方々との語らいの場に、ぜひお召しいただきたい作務衣の極みの逸品です。

- トラックバック (0) -
99~00年の作務衣 , 絹作務衣

ウール作務衣 ダークグレー(うーるさむえ だーくぐれー)


寒さが厳しくなるこれからの季節に、ウールの抜群の暖かさは嬉しい限り。しかも帯電防止加工を施してありますから、あの嫌な静電気も起きません。



彩りも、男女、年齢を問わず、どなたにでもよく似合う濃い目のグレーを採用。



意匠の面でも、ゴム袖ファンの熱いご要望により、ウール作務衣にゴム袖を始めて起用。筒袖仕様の作務衣、ゴム袖仕様の作務衣の揃い踏みと相成りました。
- トラックバック (0) -
99~00年の作務衣 , 絹作務衣

シルクウール作務衣 陽光(しるくうーるさむえ ようこう)


素朴な一葉が真紅で粋を誇るように…その主張の一着が、人の心を彩る。



焚き火、懐炉、鍋…いやはや暖かさが恋しい季節になりました。それは装いの方にも如実に現れるもの。



「作務衣で季節を楽しむ」というテーマを掲げる私どもでも、冬でも暖かな作務衣さえあれば季節をご堪能いただけるという信条のもと数々の暖ったか作務衣を生み出し、そしてこの冬も新作の開発に取り組んで参りました。



しかし、ただ単に暖かいだけの作務衣ならよそにもある…作務衣の専門館である私どもが創るのですから、自負をも込めて、それは暖の中にも粋を極めた一着でなければなりません。その信条を創作の基本に開発は始まりました。



暖かい作務衣の素材、とくれば天然の恵み豊かな、優しい感触で心身を包み込んでくれるウールがいい。



粋=お洒落、とくれば高貴な輝きを持つ絹を素材に加えてみよう。

個性を主張、とくれば時代を反映したものでなければならないから、織りはこの秋冬に大きな注目を集めているツイードを採用しよう。



そして完成した作務衣は、黒と茶によるツイードが、お洒落さの中にも実に渋い雰囲気を醸し出す逸品に仕上がりました。



一般的なツイードよりも優しさと高貴な存在感が香りたっているのは、生地の王者である絹を15%も加えてあるからです。それにより、ツイード特有のざっくり感をお楽しみいただきながら、同時に滑らかな絹の感触と着心地の良さ、渋い光沢も味わっていただけるという贅沢を実現しています。



もちろん着心地の暖かさは言わずもがな。シルクウールが創り出してくれる温もりを友に、寒風もなんのそので、季節の散策をお楽しみいただけます。

- トラックバック (0) -
97~98年の作務衣 , 絹作務衣

ウール作務衣 琵琶茶(うーるさむえ びわちゃ)


ノスタルジックな趣を存分に楽しめる古風な一着。



袖を通すと、その懐かしい見栄え織り、ざっくりとした暖かな触感に、しみじみと日本人であることの慶びを感じる…。そんな思いを味わわせてくれる一着です。



渋みのある見事な茶の彩りは、喧騒に満ちた現代に背を向け、じっくりと自分を振り返る時間にもよく似合います。



その意匠も含め、全体の雰囲気は、まさに作務衣を知り尽くした通好みの完成と呼ぶにふさわしい味わいをかもし出しています。
- トラックバック (0) -
95~96年の作務衣 , 絹作務衣

ウール作務衣 だんらん(うーるさむえ だんらん)


高機能、それは新しい伝統。伝統の味わいに加えて作務衣の合理性――楽しみが幅広くなった。



作務衣としては初めて素材にウールを採用。

暖かくてシワになりにくいこのウールは、洋服布地としての慣れ親しみもあって肌ざわりの安定感は抜群です。このウール地に「撥水」「形状記憶安定」の加工を施しています。



特に、注目は形状記憶安定。織り上がった生地に特殊な加工を施し、生地全体が伸びようとする習性を持たせます。



そして裾や袖先でその習性の方向を止めれば、いつでもピシッとシワのない作務衣が生まれるというわけ。



このため、洗濯も丸洗いOK。

乾けば生地が勝手に伸びて、アイロンがけをしなくても元通りにシワのない状態に戻ってしまいます。



そうです、ウールが家庭でザブザブと洗えてしまうのですから、これは画期的です。



上下とも総裏付で暖かさは文句なし。さらにシワも付かず水もはじく…とあって、この高機能加工のウール作務衣「だんらん」は秋から冬にかけておすすめしたい一着です。



これがウワサの高機能加工



- トラックバック (0) -
95~96年の作務衣 , 染&織作務衣

コーデュロイ作務衣と羽織(こーでゅろいさむえとはおり)

二重織りから生まれる“王様の畝”が、とてもお洒落で小粋。厚手の仕立てが、大きく包み込むような暖かさを五体に伝えてくれる。



ヨーロッパのエスプリを和の様相に溶かし込んだ職人たちの技の冴え――。



なつかしきコール天との呼び名を持ちながら、またひとつ新感覚の作務衣が誕生。
- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

コーデュロイ作務衣開発秘話(3)


この作務衣にふさわしい際杖場所は、由緒ある旧古河庭園の洋館。



完成した「コーデュロイ作務衣」。少し緑がかったグレーに、毛羽立つ前の“王様の畝”が奥ゆかしく整列しています。はおってみると実に暖かい。二重織りから生まれたこの暖かさは、これまでのどれもと違う優しさを持っています。また一歩、当会の“暖かさ”が進化しました。



西欧生まれの布地、そして、王様の畝と呼ばれるコーデュロイ、ということから、秋号かたろぐに載せる写真は由緒ある洋館で撮ろうということになりました。

そこで、選んだ撮影場所が、旧古河庭園の中にある大谷美術館。何とかお願いしてこの館のテラスや玄関まわりを使わせていただきました。ルネッサンス風の洋館と、コーデュロイ作務衣の調和は狙い通り。ピタリと決まりました。まさに、ヨーロッパの雰囲気を持った作務衣の誕生ということでしょうか。



もう何年にもわたって当会の作務衣のすばらしさを表現してもらっている男性モデルの古谷さんも「今までにない感触と暖かさですね。どっしりとしていて小粋な感じがします」とのこと。着ることにおいて作務衣の専門家である古谷さんのこの言葉は、大いなる自信となります。



コーデュロイ作務衣の開発――またひとつ作務衣の幅が広がりました。この秋は“王様の畝”でちょっと小粋に輝いてみませんか。

- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

コーデュロイ作務衣開発秘話(2)


常識にとらわれることなく、いいモノはいい!と断言したプロの目の確かさ!



素材は綿、色合いは最もコーデュロイらしいグレー系。

さあ、試作開始です。コーデュロイを織り慣れた職人を招き、指導を受けながら試し織りが続きました。



畝幅の広いもの(1インチの間に5~6本)を鬼コール、9本くらいのものを中コール、15本くらい入れると細コールといいますが、この作務衣は中コール。畝幅は広すぎても細すぎてもちょっと嫌味です。



このコーデュロイのハイライトは、何といっても浮いた毛緯の先端を剪毛して毛羽立たせる工程にあります。そして、実際にカットして独特の毛羽立った畝が次々と姿を現してきました。



ところが、わが職人たちはもうひとつ浮かぬ顔…ん?どうしたことでしょう。急遽、額を寄せてのミーティング。そして、とんでもないことを言い出したのです。



「剪毛するのをやめよう」――スタッフ一同、呆然。



コーデュロイとは、浮いた毛緯をカットして毛羽立たせるもの、それは前提というか約束事に近いものであるはず。「そりゃよく分かってるは、作務衣ということを考えると毛羽立たせない方が味があるんだ」とベテラン織り師。



そして、剪毛して毛羽立った布地と剪毛していない布地を並べて見せてくれました。

驚きました。さすがプロの眼は凄い。毛羽立った畝には奥行きが感じられません。一方、剪毛前の布地は余韻があるというか、畝も生きていて独特の渋さがあります。



一般的な常識に振り回されることなく、きちんと本質を見極める職人の目に脱帽。この人たちと作務衣を作れることに誇りさえ感じてしまいました。

- トラックバック (0) -
◆作務衣と和服の豆知識 , 95~96年の作務衣 , 染&織作務衣

コーデュロイ作務衣開発秘話(1)


“王様の畝(うね)”が秋を侍らせる



お坊さんがコール天の作務衣を着ていたとか。何でも、知り合いの呉服店で、余り布を使って一着だけ作ってもらったとのこと。

「これがなかなか小粋で、目立っていたよ」という話。意外に反対意見がありません。どころか、「厚手だから暖かそうだしね」とか「洒落た感じで仕上がるかもしれない」とか、もう決まったかの如き発言が相次ぎました。



これだけみんなの頭の中にイメージが浮かぶのなら大丈夫――決まる時はこういうもの。秋の新作は、かくして「コーデュロイ作務衣」に決定です。



二重織りでタテに畝を走らせる――暖かさや丈夫さも抜群!



その昔、西欧のある王様が城の兵士にこの布地の服を着せたところ、とても美しく立派に見えた――という話から名付けられたcordeduroi(王様の畝)。

この“コーデュロイ”、わが国には1891年(明治24年)頃に初めて輸入されたと言われています。特徴は、平織りの地の上に、パイル織りを重ねて、毛緯をタテ糸の上に浮かせ、その浮いた毛緯を中央で剪毛(切断)して毛羽立たせ、タテの方向に毛羽の畝を走らせることにあります。



これが王様の畝と呼ばれるコーデュロイならではの畝模様。畝の凹凸感が見ても触っても小粋な感じで、とてもお洒落。さらに、織りを重ねているため厚手に仕上がり、暖かさや丈夫さは抜群。風合い、機能ともに、秋の作務衣に申し分なしといえましょう。

- トラックバック (0) -
カタログ和服こぼれ話

作務衣と私


皆様はどのような時に作務衣をお召しになり、また、どのように作務衣を着こなしていらっしゃるのでしょうか。このコーナーでは、「伝統芸術を着る会」の会員である作務衣ファンを訪ね、その近状をレポートいたします。

今回は、千葉県柏市で手打ちそばを作っていらっしゃる高橋様を訪ねました。



50歳で飛び込んだ修行の道



私が蕎麦屋を始めたのは三年前です。いわゆる脱サラですが、手打ち蕎麦を教えてくれるところを、あちこち訪ね歩き、信州のあるお店で住み込みで修行を始めたのは50歳のときでした。



一般には一人前になるまで10年の修行が必要といわれますが、私の場合は今後がありませんので、足掛け二年で切り上げ、商売をしながら修行を積む毎日です。



勉強不足を補うため、他に負けない食材と雰囲気の店にしたいと思いました。さいわい、竹林のそばに遊んでいた土地を借りて、モダン和風をテーマにした蕎麦屋らしからぬお店を建てました。



蕎麦粉は北海道産を取り寄せ、蕎麦粉100%の生粉打ちが看板商品です。おかげさまで、口コミで少しずつ人気が出てきました。



モダン和風の店に作務衣が似合う



味さえ良ければいいじゃないか、というので、つい最近まで普段着にエプロンで通してきました。ところが、お店のムードによく合うからと、知人が作務衣をプレゼントしてくれました。



最初は気恥ずかしかったのですが、着てみると意外と好評で、結局、私のユニフォームになってしまいました。朝、蕎麦打ちを終えて作務衣に袖を通すと、気分もピシッと引き締まります。そうなるともう一着欲しくなります。

そんな時目にとまったのが「伝統芸術を着る会」のカタログでした。



新作の案内が届くのが待ち遠しいですね。



「作務衣かたろぐ」が届けられますが、今号はどんな特集があるか、どんな新作があるかなと封を開けるのを楽しみにしています。



作務衣を作業着だけにしておくのはもったいないじゃないですか。今では休日に家でくつろぐ時や、正月など客を迎える時にも作務衣を着ていきます。



「作務衣かたろぐ」は商品を売るだけでなく、どんな時に着たら良いかなどTPOの参考にもなるので、じっくり拝見しています。これからも新作の開発をよろしくお願いします。



「すずめ庵」東武野田線 豊四季駅下車、徒歩約15分



作務衣ファンからの皆様のお便りを募集しています。作務衣を着たあなたをぜひご紹介下さい。

- トラックバック (0) -