日本の和服・作務衣を専門に追求した「作務衣博物館」

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甦る日本の和服 伝統技術と匠の技

西ケ崎から、新しい風。「辻村染織のお茶染め」(7)


何だかお茶の香りが漂ってくるような、素朴で上品な色合い。



以上、駆け足ながら工程を見せてもらった。しかし、まだ完成品を拝見していない――。

「いやあすまん。工程を経てから見て欲しかったもんでな。少しじらしすぎたかな…」と七代目。そこへ啓介さんが、一着の作務衣を抱えてやってきた。



スタッフから期せずして声が上がった。先ほどの糸の段階で見た黒っぽい感じはきれいに消えていて、実に味わい深い“茶色”に仕上がっている。少しザラッとした手触り、表面にボツボツした加工がしてある。



「ネップ加工をしてみたんです。作務衣の良さは、様式や色と並んで肌にふれる感触や素材の手触りにあると思いますから、ゴワゴワ感やザラッとした感覚は大切だと思いますよ」と啓介さん。そう言えば、七代目の代表作“刺子作務衣”も…。

「茶染めの新しさだけに甘えちゃいかんということですな」と、七代目がピシリと決めた。



しかし、何とも素朴で上品な色。何だかお茶の香りが漂ってくるような感じ。これなら文句なしである。



「申し訳ないと思ったけど、自信があったのでもう作り始めているよ。というのも、かなり日数がかかるし、茶の大量仕入れの関係もあったからね…」

それは大助かり、手作り作務衣の悩みは、注文殺到時の供給が追いつかないことだからだ。



夏季的な茶染め作務衣の開発。しかも、この質の高さは驚異的。



「趣味や同好会などで個人的に茶染めをやっている人はいるかもしれないけど、茶染めの作務衣ってえのは聞いたことないな。まず初めてのことだと思うよ」と七代目。啓介さんもウンウンとうなずいている。



常に作務衣の質的な向上と広がりを求め続けている当会としては、今回の本格的な茶染めの開発は非常にありがたい。しかも、初めてにしてこの質的レベルの高さは、啓介さんと七代目に深い敬意を表したい。



それもこれも部屋の片すみに積んである試作品の山に尽きるようだ。

「いやあ、これは人に言うことじゃないですよ。自分自身のためにやったことなんですから…」と謙虚な啓介さんだが、思い込んだら一すじの妥協を許さぬ性格が、この成功を収めたと言うべきだろ。



来年の八十八夜に向けて、早くもお茶の手配を…



今後、西ケ崎では、藍染めを七代目、茶染めを啓介さんの二本柱で展開してゆくという。

「来年の八十八夜に向けて、材料であるお茶の手配にもう頭を痛めていますよ」と啓介さん。幸いに、この茶染め開発には、掛川の農協関係者も注目していて、協力を約束してくれているという。



七代目、立派な跡取りができましたね――と水を向けると、「なあに、まだまだひよっ子だよ」と照れた。

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