作務衣で愉しむ伝統の藍染

作務衣で愉しむ伝統の藍染

藍。その言葉にそこはかとなく趣と深い味わいを受けるのはなぜでしょう。
日本人にとって馴染みの深い藍染は、今や世界に認められる日本の色です。
藍について、少し深く見てみましょう。

わが国最古の染色技術、藍染

作務衣

藍染めとは、蓼科の植物である藍を染料とする、わが国最古の染色技術であり、奈良正倉院の宝物にも、藍染めが残っています。

中国では紀元前1世紀の頃、すでに「礼記」という書物の中に藍という言葉が登場するほど歴史は古いのです。

現存する最古の藍染を施した布はエジプトのピラミッドから発見された4〜5千年前のものと云われており、藍染めが太古から人々の間で用いられていたことをしのぶことができます。

日本でも千年以上の歴史を持ち、かの「源氏物語絵巻」にも登場しています。平安時代にはほぼ完成の域に達し、鎌倉時代に全国に普及。江戸時代には日本独自の藍染の文化を開花させました。

藍は、ヨーロッパでは「ジャパンブルー」、アメリカでは安藤広重の「東海道五十三次」に描かれた鮮やかな空や水の藍色から「ヒロシゲブルー」と名づけられ、現在では日本の代表的な色として世界に認められるまでになっています。

藍は、人の心までも染め上げてしまう"時代を超えた日本の彩り"といえましょう。

瞬間的に緑から青へ…その変身は藍の描くドラマ

すくも

現代の主流は、インディゴと呼ばれる安価な科学薬品を使用した染料ですが、本藍染めは「すくも」という、古来より変わらぬ天然染料で染められています。

藍染の原料となる蓼藍はタデ科の一年草。
降り注ぐ陽光、大地を濡らす慈雨、畑を渡り行く爽やかな風…大自然の中で育つ藍はまさに天然の宝物。

手塩にかけて育てた「蓼(たで)」から古代染料を採取し、糸の段階から、繰り返し何度も藍に浸して染め上げてゆきます。

染めの過程に見せる藍の姿は神秘そのものです。

蓼藍の葉を発酵させて固めた藍玉を、カメの中でさらに自然発酵させると茶緑の樹液が生まれます。この液に綿を紡いで作った"かせ糸"を漬け込み引き上げると、空気に触れた途端、緑色の糸が鮮やかな藍色にドラマチックに変身するのです。

その劇的な瞬間は「空気酸化」と呼ばれ、藍染の魅力をさらに神秘的なものにしています。

藍の濃淡

藍の濃淡を決めるのは、漬け込みの回数。濃い藍だと10〜15回ほどで、その色に応じて、藍白(あいじろ)、瓶覗(かめのぞき)、浅葱(あさぎ)、藍、紺(こん)と呼ばれます。

日本固有の「蓼」で染めた藍は「ジャパニーズ・ブルー」とも呼ばれ、日本人の肌に美しく映えます。天然藍で染めると、洗うほどに灰汁が抜けて落ち着いた色が冴え、深い風合いをかもし出す事で有名です。

清流と職人の意気込みが彩りを磨いてゆく

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「かせ糸」の漬け込みの回数による微妙な色合いの調整、そして河などの豊かな清流を利用して行われる、みそぎにも似た入念な洗いなど…。

藍染を行う過程は、むろん全てが職人による、丹念で手間暇のかかる手作業…。彼らの鍛え抜かれた感覚と技術が、藍という自然が生んだ原石を至宝の彩りへと高めてゆくのです。

そんな生きている色だからこそ、藍は、見る人や着る人を問わず、しんしんと心に滲みてゆきます。

時を越えて、数え切れないほど大勢の人々の間で、変わることのない普遍の彩りとして愛され続け、これからも私たちの暮らしと共に歩んでゆくことでしょう。

現代で見直される伝統の本藍染め

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藍が歴史に誕生してから四千年。古来から、日本人の生活に深く関わりのある天然染料として親しまれていました。 では、昔の人々は、どのように藍を役立てていたのでしょう。

昔の人は、藍染めを野良着として重宝していました。 藍の染料が糸の表面につくことで強度が増し、丈夫で摩擦に強い着物になったのです。

日本の歴史を調べると、あらゆるところに藍に関する記述が見られます。 古来より日本人の生活に欠かせぬものとして、その傍らにあったのが藍なのです。

科学染料に押され衰退を辿っていた天然染料ですが、もう一度その良さが見直されようとしています。わが国最古の、そして歴史を経て今も使われ続けている藍。伝統の本藍染めを、皆様の目でお確かめください。